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役立つ病虫害の話
ジャパンアグリバイオの研究員が、皆様に役立つ病虫害の情報を連載します。
役立つ病虫害の話
バックナンバーの情報につきましては、発表当時の内容をそのまま掲載しております。文中の農薬に関しましては必ず最新の登録状況をご確認ください。今まで使っていない農薬を使用する場合は、お近くの種苗専門店や農協、公共機関ともご相談ください。
バラ根頭がん腫病について

今回はAgrobacterium tumefaciensという細菌によって引き起こされるバラ根頭がん腫病について紹介いたします。近年、植物分類学の進歩で、本病原細菌はRhizobium属に含まれることが明らかになり、正式な学名はRhizobium radiobacterとなっています。しかしAgrobacterium tumefaciens という呼称の方がよく知られており、まだこの呼称が広く使われています。
このバラ根頭がん腫を引き起こす病原菌は植物ホルモン活性をもつ遺伝子を植物に導入する能力があります。いったんこの遺伝子を導入された植物は、その後病原菌の有無に関わらず、がん腫を作ってしまうのです。

症状と診断方法:
がん腫症状は接ぎ木部や根部に見られることが多いです。傷口から感染しやすく、はじめ小さな白いこぶが現われます。このこぶは植物の生育に伴ってしだいに大きくなり、時には4、5cm以上の大きな不整球形のがん腫になることもあります。がん腫は肥大とともにしだいにその表面が硬化して褐変し、さらに黒褐色に変わっていきます。
がん腫の大きさは根頭部に感染した場合、特に大きくなりやすく、地中の根では小さい傾向が見られるようです。また、地上部の枝の傷や折り曲げた部分にがん腫ができることもあります。根頭がん腫病によって株が枯死することは少ないのですが、根頭部に大きながん腫ができた場合、次第に生育、花つきも悪くなるため、切花栽培に大きな影響を与えます。
がん腫病の見分け方は、
1)発生初期は、白色や淡褐色のこぶ状隆起が認められる。
2)肥大したこぶの場合、黒褐色で表面がごつごつしている。
という点です。但し、発生初期は、正常なカルスと区別することは容易ではありません。正常なカルスの場合は表面が極端にごつごつにならず、色も通常の株元と大差ないようです。

 

がん腫症状の写真

 

伝染源と対策:
特に若いがん腫に病原細菌が多く生息し、やがて土壌中にも広がります。病原菌は土壌中で数年間も生存することができ、根や接ぎ木部の傷口から新たに侵入・感染します。
25℃前後の高温多湿の条件が最も発病しやすい環境で、この条件では感染後1〜2週間でがん腫の形成が認められます。しかし秋の低温期に感染した場合には、潜在感染し、がん腫が形成されるのは温度が上昇する翌年春以降になることがあります。
防除対策としては
1)接ぎ木や挿し木などに使用する刃物は必ず消毒する。
2)剪定や断根などの作業に使用する農具も消毒したものを使用する。
消毒方法は煮沸、火炎滅菌、次亜塩素酸ナトリウム1%溶液に2〜3分間浸漬などが有効です。
3)がん腫病が発生した圃場を改植する場合、土壌消毒が必要。
蒸気消毒、バスアミド微粒剤あるいはガスタード微粒剤を使用すると良いでしょう。
4)バクテローズ(商品名)という微生物農薬を植え付け時に苗の根部へ浸漬処理し、そのまま植え付ける。
但し、本農薬の効果は感染防止であり、治療効果はありません。

バラ根頭がん腫病は治療ができないので、予防が最も大切です。(2010年2月26日)

[ TEXT:森本 正幸 ]
バラの虫害(コガネムシ類)

 

コガネムシ類写真1

コガネムシ類写真2

バラの営利生産でコガネムシ類が問題になることは殆ど無いでしょうが(クーラー付の締め切った温室ならなおさらです)、鑑賞目的の家庭園芸・露地栽培ではせっかくの花が無残に食害されるため、愛好家にとって重要害虫といえるでしょう。
写真は8月にバラの花を食害していたマメコガネです。成虫は5〜10月頃に現れ、体長8〜13mm、緑色の胸部と褐色の前翅、さらに腹部に白い毛が密集した部分があり、斑点のように見えるのが大きな特徴です。幼虫も芝など各種植物の根を食害する害虫として知られています。成虫は昼に行動し、名前の通りダイズなどマメ科植物を好んで食べるそうですが、ブドウその他多くの植物も食害するそうです。バラの花弁・蕾・雄ずいも好んで食害します。花が無い時は葉も食べるようです。集団で花に食らい付いていますが、人が近づくと後脚をピンと上げて警戒し、飛び立って逃げます。20世紀初頭までに日本から北米に侵入し、現地でジャパニーズ・ビートルと忌み嫌われる存在になったとのこと、この食べっぷりを見ると納得できます。その他バラを食害するコガネムシ類としてはヒメコガネ、ドウガネブイブイ等が知られています。

防除についてですが、他からも飛来するため農薬散布での防除は現実的でないかもしれません。ブドウ農園や芝が幼虫に食害を受けるゴルフ場では、成虫をフェロモントラップを用いて防除するようです。「コガネムシ」「トラップ」でネット上を検索すると各種コガネムシ類に個別に対応したトラップが販売されているのがわかります。また、ペットボトルとちょっとした食材でトラップを自作する人も多いようです。(2008年9月1日)
[ TEXT:縄田 治 ]
 
バラの病害:バラ根腐病・立枯病・疫病

 

バラ根腐病写真

葉が黄化・枯死した状態写真

2006年8月に、葉が黄化・枯死をしたバラが持ち込まれました。ロックウールを用いた養液栽培で、夏になり気温が高くなった頃から急速に多数の株に症状が出たとのことでした。症状株では左の写真のように根の多くが黒褐色に変色・腐敗しており、根の腐敗が地上部の症状につながっていることは明らかでした。複数株の黒褐色に腐敗した根からはそれぞれピシウム属菌が高率で分離されたため、種の判別をDNAレベルで行ったところ(ピシウム属菌は見た目で細かな種類の判別は難しいです)、Pythium helicoides(ピシウム ヘリコイデス)と良く一致し、その症状が1996年に新たに発生した同菌によるバラ根腐病であると判断しました。

バラ根腐病については初発生以降全国に急速に広まっているとされています。高温の夏期に症状が急速に進みますが、伝染はその前後の時期によく形成される水中を泳ぐ胞子(=遊走子)により起こることなど、岐阜大学でよく研究されています。

2007年8月にも同様に左の写真のように葉が黄化・枯死したり、根が黒褐色に腐敗したバラの調査依頼があり、また同じバラ根腐病だろうと思い調査を開始しましたが、ピシウム属菌は検出されない一方、リゾクトニア属菌が腐敗部位から多数分離されたため、こちらはバラ立枯病と判断しました。これら根腐病と立枯病の他に類似の症状を出す病害としてバラ疫病が知られています。これら病害の間では発生時期や症状が似通っている反面、効果が期待できる薬剤の種類は大きく異なること、被害程度にも違いがありえるため、類似の症状が発生した場合はどの病害なのか正確に調査することが必要になります。 (2008年5月7日)

[ TEXT:縄田 治]
 
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